基板実装とは

プリント基板(プリント配線板)に電子部品を接合し、電気的につなげるとともに機械的な固定を行う工程を言います。

プリント基板の実装形態は大きく分けて3つあります。

  • 挿入実装
  • 表面実装
  • ベアチップ実装

挿入実装は、プリント基板上に設けられたスルーホールと言われる配線めっきされた穴に部品リードを差し込み、はんだ付けする工法です。

表面実装は、基板の表面に設けられたパッド(ランド)に電子部品の電極をはんだ付けします。

ベアチップ実装は、むき出しの半導体に電極を設け、これをプリント基板上のパッドに接合するものです。フリップチップなどがこれにあたります。また最近では、プリント基板自体に抵抗被膜やコンデンサ膜などを印刷によって形成する工法もあり、これも複合実装と言うこともできるでしょう。

現在多くの電子機器に使用されている実装プリント基板は,これらの基本形態とその組合せである混載実装,複合実装であることが多いようです。 混載実装は、挿入実装と表面実装の組み合わせで現在の基板実装はこの形態がほとんどです。これらはさらにフロー槽を通るものと、挿入部品の部分はんだ付けに分けられます。 複合実装は、主に表面実装とベアチップ実装の組み合わせです。ベアチップは非常にデリケートで、取り扱いが難しくマザー基板に直接実装されることはほとんどなく、特殊なモジュール部品などに使われています。

当ホームページでは、現在最も多く用いられている表面実装を主に取り扱っています。

表面実装とは、簡単に言うとプリント基板に電子部品をくっつける仕事のうち、基板の表面に電子部品を付ける仕事を言います。

昔の電子部品のほとんどはリードと呼ばれる電極を基板の穴(スルーホール)に差し込んではんだ付けを行っていました。しかしこの工法では、どうしても多くの部品を基板上に配置しようとすると、基板が大きくなってしまい、製品が小型化できませんでした。

そこで登場したのが表面実装(SMT)です。(以下SMT)

SMTでは、スルーホールを使わずに、基板の表面に設けられたパッド(ランド)に電子部品の電極をはんだ付けすることにより、基板の両面を利用して実装密度を高めることができました。また、電子部品そのものも小型化され、プリント基板の配線長も短くなり、回路を高速化することもできます。最近では、電子部品の小型化が進み、コンデンサや抵抗などの受動部品で0.2mm×0.1mmのサイズのものもあります。(2014年現在)ただし、まだまだ一般的ではなく、携帯電話やスマホなどには0.6mm×0.3mmが良く使われているようです。

混載実装は表面実装と挿入実装の組み合わせです。

最近は減りましたが、表面実装工程後フロー槽に流す工程では、はんだ面の表面実装部品を接着剤で仮固定し、挿入部品を実装し、フロー槽で流しています。

実装基板に含まれる挿入部品の割合はどんどん減ってきていますが、コネクタなどどうしてもSMD化できない部品もあり、実装最終段階で「後付」されることも多いようです。後付は手はんだ(マニュアルソルダリング)や、部分DIP等と呼ばれる基板の一部分のみのはんだ槽を利用することもあります。



両面リフローは、基板の両面とも印刷工法を用いて部品を実装する工法を言います。

すべての部品が表面実装部品であれば、SMTラインだけで工程は完了しますが、挿入部品がある場合は、フローパレットなどで表面実装部品をマスキングしてフロー槽に流したり、部分はんだ槽ではんだ付けしたり、はんだこてによるマニュアルソルダリングも一般的に行われています。この工法は、従来の挿入実装や混載実装に比較して、実装密度を高めるのに非常に有効で、現在ではほぼ標準的な工法と言えます。

両面リフローは、実装密度を高められるという利点がある一方、部品が小型化し部品間距離もどんどん狭くなっており、設備の精度はもちろん、材料の取り扱いを含めたラインの運用管理が問われています。また品質保証を考えるうえでプロセス制御が大変重要視されています。

プリント基板組み立てに使われる部品(材料)は

プリント基板

電子部品

はんだ

仮固定用の接着剤

その他副資材

があります。

はんだと言えば、通常思い浮かべるのは糸はんだです。電子工作などでご存知の方も多いと思います。

マニュアルソルダリングにはなくてならないものですが、設備で使われるのが棒はんだとソルダーペースト(クリームはんだ)です。

棒はんだはフロー槽などに投入する棒状または板状に加工されたはんだの塊です。これをはんだ槽に入れて溶かして使用します。

棒はんだはフロー槽などに投入する棒状または板状に加工されたはんだの塊です。これをはんだ槽に入れて溶かして使用します。

ソルダーペーストは、はんだを小さな粒子状に加工してフラックスで練り合わせたものです。粒子径や形状は様々なものがありますが、一般的に球形で25μm~38μmのものが良く使われています。

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実装技術とはんだ付けは切っても切り離すことができない存在です。

はんだ付けという言葉そのものは聞いたことがあると思います。最近では中学校の技術家庭科でちょっと習ったことがあるという人もいるでしょう。電子工作などに興味のある人なら身近な存在かもしれません。

実装の世界で行われるはんだ付けは、マイクロソルダリングと言われ微細はんだづけというカテゴリになります。プリント基板のはんだ付け箇所は一つの製品で数千から数万か所にも上ります。マイクロソルダリングは製品の品質を決める重要な要素であるともいえます。

そもそもはんだ付けとはなんでしょうか。

物と物をくっつけることを接合と言います。接合には大きく分けて2種類あります。一つは後から分解できるもの、もう一つは分解ができないものです。前者はボルトやナット等の機械的に接合するもの、後者は溶接と接着に分類されます。さらに溶接は、ろう接、圧接、融接の3つに分類され、はんだ付けはろう接に定義されています。

溶接は、アーク溶接に代表されるように、母材(溶接対象)そのものの温度を融点以上に上げて、溶かして冷やせば接合できるという原理です。

これに対し、はんだ付け(ろう付け)は母材そのものは融点に達することはありません。基板が溶けるわけではないのです。

では、どのように基板と部品は接合されているのでしょうか。

そもそも金属は完全な平面が接すれば、それだけで接合が可能です。ブロックゲージを使ったことがある方は良くご存知と思いますが、ブロックゲージの表面はきわめて精度よく磨かれており、ブロックゲージ同士を合わせると密着します。つまり接合部が完全な平面であれば、常温でも接合は可能なわけですが、現実的に完全な平面を加工することはできません。(ブロックゲージも完全ではありません)そこで微細な隙間を埋める金属が必要になるわけです。

その隙間を埋めるのが溶融したはんだです。溶融したはんだは母材(電極)間に流れ込み隙間を埋めます。(ぬれ)次に溶解現象(後で説明)が起こり、金属間化合物を層を形成し、母材は接合されます。

はんだ付けには、母材表面の清浄度がポイントとなります。母材表面に酸化被膜が残っていると正常に接合できません。これらはフラックスの働きによって除去されています。

 

ここで金属間化合物層の形成と言う言葉が出てきましたが、これは絶対条件ではありません。言うなれば必要悪と言うところでしょうか。後ほど説明しますが、この層が成長すると接合信頼性に重大な影響を及ぼします。(後ほど説明します。)

 

溶解現象とは、一般的に液体に固体が溶け出すことを言います。例えば砂糖をそのまま熱して溶かそうとすると、かなりの温度を加えなければなりませんが、常温では水には簡単に溶けます。これと同様に融点が1083度の銅でも液体のはんだ(Sn)中には簡単に溶けだすことができます。こうして接合界面で分子レベルでの合金が生成されCuの融点に達することなく母材を接合することができます。

 

溶解現象では困ったこともたくさん起こります。一番わかりやすいのが、フロー槽のソルダバスの不純物です。フロー槽では常にはんだが溶融しているので、Cuをはじめ様々な金属が溶融はんだに溶け込みます。このためフロー槽は一定期間で不純物の含有量検査が必要になります。

はんだ付けの信頼性は、電子機器の信頼性となります。信頼性の高いはんだ付けができれば製品の信頼性も高まるということになります。

はんだ付けの目的は2つあります。一つは電気的に接続されていること、もう一つは機械的な強度と耐久性を実現していることです。電気的な接続は機械的に接合されていれば実現できるので、目的は達せられますが、問題は母材接合部の機械的信頼性です。

はんだ付けは、母材の酸化被膜の除去、はんだの濡れ、溶解、拡散と進みますが、それぞれに適正な温度と時間が存在します。むやみに温度を上げると電子部品に影響を及ぼしますし、長い時間溶融はんだに接した銅は、反応層を成長させ接合界面が脆くなります。脆くなった接合部は、製品の使用環境により破壊に至り、製品の設計寿命を満たすことができません。


 

日本溶接協会 標準マイクロソルダリングより

良いはんだ付けとはどういうものでしょう。

標準マイクロソルダリング技術から引用すると、

  1. ソルダが良く流れ裾を引いていること
  2. 光沢とつやがあって、なめらかであること
  3. ソルダの肉厚が薄く、線筋が容易に想像できる
  4. 割れやピンホールなどの異常はないか

これらはそれぞれ、

  1. ぬれ性、量(清浄、加熱)
  2. 化合物(合金)、拡散(加熱、時間)
  3. ソルダ量、ぬれ(正常、加熱)
  4. 外観異常(応力、正常、熱容量)

のチェックになります。

ただし、Pbフリーはんだにおいては、光沢とつやは期待できませんので、Pbフリーはんだの外観検査においては除外されます。

ソルダ量(はんだ量)については、多すぎても少なすぎてもいけません。量については多ければ多いほど良い、少ないよりは多いほうが良い、ととらえている人が多いのですが、適正量でなければなりません。少なければ当然強度的な問題が出てきますし、多すぎると接合部での不良部分が覆われてしまって、本来発見されるべき接合不良が発見できなくなります。

多すぎるはんだは外観検査を困難にします。適正なはんだ量であればフィレット形状はなめらかな凹面を描きますが、多すぎる場合凸形状になり、濡れ不良との判別が非常に困難になります。

接合信頼性を語る上で外せないキーワードの一つとして、拡散があります。拡散とは結晶格子中の熱振動している金属原子が、温度が充分高くなるとある格子点からほかの格子点へ自由に移動する現象を言います。(はんだ付けに関しての説明)

溶融したはんだに接したCuは溶解をはじめ溶融中のはんだに溶け込みます。CuがSnに溶け込める量は温度によって決まっています。これは水に砂糖を溶かすのに常温より温めた水のほうがより多く溶けると言う現象と同じで、専門的に固溶限と言います。Sn中のCuの濃度が固溶限に達すると、η相(Cu6Sn5)と呼ばれる反応層が形成されます。しかし接合時の温度が高すぎたり時間が長すぎると、η相とCuの間にε相(Cu3Sn)という反応層が拡散によって成長します。接合時にε相が形成されるほど接合温度が高い場合は、非常に危険な接合状態と言えます。

はんだ付けにおいて反応層は必要条件ですが、反応層は硬くて脆いため反応層が成長すると接合部が破断することがあります。また金属原子の相互拡散による空孔が発生することがあります。(カーケンダル効果)これらは接合信頼性を左右する重要な要因となります。

なお、よく言われるのがAuメッキ(Auフラッシュめっき)の信頼性が他のプリント基板表面処理に比べ劣るということです。これはAuが他の金属に比べてSnへの溶解速度(溶解量)が大きく、短時間でSn中に拡散し、Au-Sn化合物やAn-Sn-Cu化合物を形成し、破断の原因となりやすいためです。