マイナーなソフトのため知っている人が少ないのですが、実装現場にこれ以上マッチするソフトはないだろうという、グラフィック系のソフトのご紹介です。
ブログ時代にも少しご紹介しましたが、改めて説明したいと思います。
http://www.poladigital.co.jp/canvas/
機能は多彩で、ドロー系、ペイント系両方を同じプラットフォームで扱えます。また読み込みファイルの種類も非常に多く、PDFはもちろんDXF等のCAD系、JPG、ビットマップなどの画像系等、客先からもらうであろうファイルの種類ほとんどを網羅しています。特に重宝するのが、PDFの読み込みです。CAD的な使い方もできるため、PDFを正確に加工してまたPDFで出力したり、画像として出力するなど簡単に行えます。
文章だけではわかりづらいかと思いますので、具体的な作業を以下に記載します。
基板のサポートピンテンプレートを作ります。テンプレートは搬送ベルト上に置くのではなく、ステージ上に直接おいてピンをさせる形のものです。
通常こういったものは、現物から起こすことが多いのですが、最近は座標データや部品表とともに、PDFで実装図などをもらうこともかなり多くなりました。
それらの資料を利用し、実装前にそれらの資料でテンプレートを作成できれば、ラインを止める時間を少なくすることができます。
今回、PDFでシルク図をもらったと想定します。
サポートピンのテンプレートを作るのは、はんだ面とします。供給はんだ面のシルク図ですが、まず寸法を確認します。
CANVASを起動し、sample_pwb.pdfを開きます。CANVASは難なくPDFを開けます。
開いた直後はこんな感じです。
デフォルトでは単位がポイントになっていますので、mmに変更します。
デフォルトでは単位がポイントになっていますので、mmに変更します。
今までの経験では、縮尺が極端におかしなPDFをもらったことはありませんが、念のため寸法を測定し、縮尺がおかしくないか確認します。あらかじめ基板外形寸法がわかっていることが前提です。
CANVASはこのようにCADのような使い方もできます。
寸法を測ってみて縮尺がおかしかったら、スケールで自由に縮尺を変更できます。
寸法が正しく設定できたら、基板を反転させます。
サポートピンを立てるわけですから、裏返すわけです。
ここまでできたら、今度は設備の図面を準備します。メーカーからDXF等もらえる場合は、DXFをそのままもらえますし、実測して正確な図を描くこともできます。磁石式のサポートピンでは、穴はいらないので外形だけ描いておけばいいですね。
この図面にレイヤーを2つ追加し、全部で3つのレイヤーにします。
レイヤーを下から、基板、サポートピンプレート、穴位置に設定します。
基板の画を基板のレイヤーに置きます。今回は印刷機ですので、基板を中央、レール位置に基板端面がくるように置きます。
基板を最下層のレイヤーに置いたら、最上層のレイヤーに移ります。ここに穴をあけるところに印をつけます。
私は10mm系のポンチを使って穴をあけているので、11mmの印を作って穴をあけるところにコピーして貼り付けています。
コピーと言っても一つ選んで、Ctrlキーを押しながらドラッグするだけで、任意の場所に複製ができるので作業はとてもスムーズです。
最後に基板名や管理番号など必要な情報を書き入れます。
この後、印刷してラミネートし、ポンチで穴をあけて完成です。
サポートピンプレートの図面は一度書いておけば使いまわしができます。
それ以外の作業でここまでやっておよそ5~10分ぐらいです。ラインで、印刷機を覗きながら、透明フィルムなどにマジックで印をつけていく方法に比べ非常に簡単にテンプレートを作成することができますし、ラインを止めないで作業できるのが大きな利点です。
CANVASは画像も取り扱えますので、シルク図の替わりにスキャナーで読んだ基板を最下層のレイヤーに置くことも可能です。スキャナーの解像度がわかっていれば、CANVAS側で同じ解像度にすれば、原寸で表示されます。
私がCANVASを愛用している大きな理由の一つが、画像だろうが、CADデータであろうが、PDFであろうが、同じプラットフォームで扱え、出力を原寸で出せることにあります。お客さんによってはデータの入手が困難で写真のみの場合や、DXF等のデータで支給される場合など、SMTの現場では様々なデータ形式が入り乱れて配布されますが、このソフトほど多岐にわたりファイル形式をサポートしているソフトはそうそうなく、しかもお手ごろな値段で手に入るというものを他に私は知りません。
今回、サポートピンプレートの作成を紹介しましたが、他にも目視作業者のためのテンプレート作成や、見積もり用の実装基板(または写真)から実装点数をカウントし見積書を作ったり、営業用のチラシを作ったり、高解像度でスキャンした基板画像から座標値を測定したり、アイディア次第で使い方はどんどん広がります。
評価版もダウンロードできるようですので、皆さん一度お試しいただきたいと思います。