印刷検査

印刷検査機では、プリント基板に印刷されたソルダーペーストの位置、量(かすれ、にじみ)が、メタルマスクの開口部に対しおよびプリント基板のパッドに対して適正であるかどうかを検査します。最近では高さまで検査を行える印刷検査装置もあります。

2次元の検査においては、CCDカメラを使用した画像処理方式が良く使われます。SMTの外観検査においては、照明に工夫がなされることが多く、印刷検査の場合高さ方向に制限がほとんどないため、基板すれすれに照明を配置したものなども見られます。また同軸落射照明と組み合わせて擬似的に印刷形状を再現できるものもあります。

高さ方向を測定する3次元検査では、レーザーを用いた三角法や、光干渉縞を利用した位相シフト方式などが使われます。いずれの方法もどこから高さを計るかという基準点が非常に問題となります。基板表層は一般的に上からシルク、レジスト、銅箔と重なっており、どの部分を高さの基点とするか、基板の反りをどう補正するかが、各社のノウハウとなっているようです。


次に印刷検査機の有用性について具体的に示します。まず写真をご覧ください。

これは、材料支給(はんだ含む)メタルマスク支給で、協力会社に同じ基板を打ってもらった結果です。もちろん温度プロファイルも同じにしてもらっています。なぜか協力会社で作業してもらったほうははんだボールが多発しています。

材料やプロセスは同じなのに違う結果が出るのには何か原因があるはずです。残念ながらスポットでお願いした仕事で、1回で終わってしまったので原因はつかめませんでした。

あくまでも、仮説での要因分析となりますが、工程の違いを考えてみます。

印刷機は同じ機種でした。(細かい仕様は異なります。)マウンターはメーカーは同じですが、機種は異なりました。リフローは違うメーカーで違う機種ですが、両ラインとも窒素対応です。リフローは温度プロファイルを合わせているのでそんなに大きな違いはないと思います。生産設備では大きな違いがなさそうですが、自社ラインには印刷検査機とリフロー前に実装検査機が入っています。リフロー後の外観検査装置は両ラインともあります。(はんだボールの検査はしていなかったよう)

設備で大きな違いは、印刷検査機の有無です。

こう見ていくと印刷状態が疑われます。スキージは自社がプラスチック、協力会社はウレタンです。印刷条件に付いては確認できていませんが、はんだボール発生の特性から推察される要因として、

はんだ量

はんだの酸化

電極の酸化

印刷ずれ

温度プロファイル

等考えられますが、材料支給、温度プロファイルも合わせてあることを考えると、正しく印刷できていたか?、ソルダーペーストは使用期限を守っていたか?の2つくらいしか残りません。ソルダーペーストを2ビン支給しており、今回のスポットの仕事は正味2日程度で終わっており、2ビンとも使っているため、使用期限を超えて使った可能性もほぼないと思います。

残るは、正しく印刷できていたかどうかです。はんだボールの多発ですので、はんだ量が過剰であったと推察されます。最初の立ち上げ時は印刷確認したはずです。それがだんだん悪くなるような何かの要因があったのか、クリーニングのインターバルが長すぎたのかもしれません。

印刷検査機があれば印刷不良は流れなかったし、仮にしきい値を甘く設定して無理に流しても、検査結果が残っているのでそれを提出してもらえば要因特定は容易にできたかもしれません。

余談ですが、次の写真は全然別の会社に行った時の画像です。

こんな状態のスキージを使い続けていてまともな印刷などできません。もちろんこの会社には印刷検査機なんてありませんでした。


最初にお願いした協力会社さんはここまでひどくはないと思いますが、何らかの異常が発生したのに気が付かずに、ライン投入を続けたのが一番の問題だったのではないかと思います。特に多品種少量生産の場合は、1回の生産で終了してしまうことが多く、全数NGで修正しなくてはならないということも発生します。

ラインオペレータは、リフロー前は特に気を付けて見ますが、印刷後はなかなか見られないのが実状です。仮にリフロー前で発見しても、印刷終了からリフロー前までのラインに載っている基板は全数対処しなくてはなりません。


検査装置導入の効果を数値に表わすのは難しく、稟議書などにはどうしても人員削減でしか表現できず、リフロー後の外観検査装置優先となってしまうようです。しかし、最終的には品質を上げて工数を削減するのが目的ですので、より上流から導入し正しく運用したほうが効果は高いでしょう。