リフローと温度プロファイル

リフロー工程は、印刷され電子部品の載ったプリント基板を加熱してはんだ付けする工程です。プリント基板はコンベアに載せられ、ヒーターが配置された炉の中に搬入され、通過中に加熱が行われはんだ付けが完了します。

SMTの中で最もプロセス条件が重要視される工程とも言えます。場合によっては顧客から毎回測定データを要求されることもありますが、逆にわかりにくくて要求事項すらまとめられないということも実際にはあります。このページでは、自社でSMTラインをお持ちでない方を中心に温度プロファイルを中心に説明します。

温度プロファイルの基本的な考え方

そもそも温度プロファイルの測定とは、リフローやフロー槽を通過する基板の特定のポイントに熱電対などを取り付け、その時間経過と温度等のデータを表やグラフにしたものです。

ここで覚えていてほしいのは、温度条件を見るのは2つの目的があるということです。一つは、加熱条件が正しくはんだ付けが行われる範囲に温度と時間があったか、もう一つは部品の耐熱保障温度を超えていないかです。したがって、温度測定は最低2か所は必要となります。一つは電極、もう一つはパッケージ表面です。電極ははんだ付け、パッケージは耐熱温度を見るためです。

理想的にはパッケージは温度上昇を避けたい、電極は適切に加熱したいという背反条件になります。特にリフローでは基板丸ごと炉の中に入るわけですから、片一方だけ冷やしたいとか、片一方だけ加熱したいなんてことはできません。一般的な部品であれば、パッケージと電極の温度差はそんなに極端には出ません。つまり両方の条件を満たす温度と時間になっているか?をチェックすることになります。

耐熱温度は部品のの仕様書に、理想的なはんだ付け温度プロファイルは、はんだの仕様書に書いてあります。これを参照して上がってきた温度プロファイルを判断してください。そして最も大事なことは、その温度プロファイルで接合されたはんだ付け状態の観察です。はんだ付けが良好な状態かどうか、必ず判断する必要があります。

測定ポイントの決め方

温度プロファイルの測定を指示したくても、どこをどう測れば良いのか、特に開発や設計が試作を依頼する場合など、困ることがあると思います。残念ながら、基板内の温度測定箇所に決まりはありません。ただいくつかのポイントはあります。まず、耐熱温度の低い部品が挙げられます。過剰な過熱を避けなければいけないデバイス等、最高温度とその時間を指定します。そんなの分からないという方は、キーとなるデバイス、CPUやASIC、DSP等をとりあえず測りましょう。

次に、意図しなくても過昇温になりやすい部品を指定します。主にアルミ電解コンデンサがこれに当たります。アルミ電解コンデンサは電極よりボディの温度のほうが上がりやすい傾向があります。またその構造上高温に弱く、鉛フリー対応の部品でもサイズによっては、ピーク温度が230度以下で5秒以内、200度以上が30秒以内と厳しい基準となっています。またリフロー回数も1回の場合もありますので、仕様書はよく読みましょう。

http://industrial.panasonic.com/www-cgi/jvcr13pz.cgi?J+PZ+3+ABA0135+EEHZA1E101XP+7+JP

逆に温度の上がりにくい部品もあります。大型のコイルなどは比熱容量が大きく、なかなかはんだの接合温度まで加熱するには時間がかかります。

これらの部品が混載された基板では、温度プロファイルは十分注意して読み取る必要があります。

実装を請け負うほうとしては、実はリフロー条件をあまりにも細かく設定されてしまうと温度条件を満たすことができなくて困ってしまうことがあります。

まず一つ目は、欲張って測定ポイントを多く設定されてしまうことです。一般的な温度測定装置(プロファイルチェッカー)は6か所までしか同時に測ることができません。それ以上のポイントを指定されてしまうと、複数回測定しなければならず非常に効率が悪くなります。

次に、比熱容量の極端に大きな部品と小さな部品が混載されている場合です。現在多く採用されている熱風(ホットエアー)式のリフローでは過昇温は避けられますが、径が10mm以上や部品高さが5mmを超える大型のコイルやトランスなどは要注意です。

この例はアルミ電解コンデンサと大型のコイルが混載されている例です。あまり良い設計とは言えません。温度プロファイルはなんとか範囲に入ったものの、かなり厳しいものがありました。

温度条件を指定したい複数の部品の許容温度範囲を重ねてみて、無理がある場合は同時加熱は不可能です。

測定値(グラフ)の見方

温度プロファイル条件をお任せにした場合、測定結果をもらったらどうすればよいでしょうか。

実装するほうとしては、お任せと言えどもお客さんに承認をもらいたいので、お伺いを立てます。

温度条件は、接合信頼性を左右する重要なプロセス条件の一つですが、出来栄え品質にも重大な影響を及ぼします。したがって温度プロファイルは各社でノウハウがあり良いか悪いか?の判断は使用する部品及びはんだの仕様書を参照するしかありません。

一応見るべきポイントを示しておきました。(ここで示した数値はあくまでも一例です。)

注意する点としては、測定ポイントがパッケージ表面なのか、電極なのかを区別して判断してください。なお本加熱以降はどんな形のプロファイルでも急冷をお勧めします。急冷すると結晶構造が緻密になりはんだ付け強度や信頼性が向上します。

温度プロファイルの決定

よく見る温度プロファイルの例として、部品メーカーなどが推奨しているグラフはだいたいこんな形をしていると思います。

2002年にJEITAが、鉛フリーはんだ実用化ロードマップのこのグラフがあります。これが元ネタかもしれません。

この温度プロファイルは、Pbフリーはんだは従来の鉛入り共晶よりピーク温度が上がるため、ピーク温度を山形ではなく平ら(台形型)にして部品への熱衝撃を小さくする目的で考えられた温度プロファイルです。これを実現するために当時のリフローメーカーは多ゾーン化へシフトしました。

一方最近ではこういった形も見られるようになりました。

この形はなるべくソルダーペーストに負担をかけない方法です。どちらが良い悪いは無いと思いますが、見慣れない形でもそれなりに意味があってやっているんだということを認識してください。

このような現場のノウハウなどもありますので、温度プロファイルについて分からない場合は、部品はやんだの仕様書を見ながら、実装を依頼する現場の方とよく話し合って決めるのが一番です。