メタルマスクの品質

メタルマスクの枠

最近では、メタルマスクの枠と言えばアルミ枠がほとんどです。昔は精度を出すために鋳物枠なども結構使われていたのですが、その重量のため作業性が悪いということでほとんど使われなくなりました。

アルミ枠は軽くて安くて扱いやすいため重宝されていますが、精度の悪いものもかなりあります。

枠の精度で最も重要なのが平面度(ねじれがないか)です。メタルマスクはコンタクト印刷のため、基板印刷面と隙間なく密着するのが理想です。ねじれやひずみのある枠は基板とメタルマスクを平行に保つことはできません。

メタルマスクは基準面に対してシリンダーで押さえつけるようにしてクランプされますが、その圧力はせいぜい0.5~0.6Mpa程度ですので、シリンダー径を考慮しても枠の大きなねじれを強制できるものではありません。

もちろん、枠は溶接されて作成されるので、ひずみを0にはできませんが、どの程度まで許容できるのか、自社設備仕様からある見当を付けておきましょう。また設備側では、基板を若干押し上げて強制的にメタルマスクに密着できる機能もあります。私は基本的に0.3mmほど押し上げる設定にしています。

テンション

通常、メタルマスクは枠にテンションを掛けた紗(ポリエステルメッシュ)を張り付け、その紗ににメタル版を貼り付けますこれをコンビネーションマスクと言います。紗をメタル版の支持体として使用する方法です。メタル版は四方から常に引っ張られている状態(テンションがかかった状態)となっています。

実はこのテンションが、印刷品質に重大な影響を及ぼします。

印刷動作は、ソルダーペーストをメタル版の孔に充填した後、基板が下がり「抜け」という動作を行いますが、この時に紗のテンションが低いと基板にメタル版がくっついてなかなか離れようとしません。

抜け動作はメタル壁面に付着しているソルダーペーストの粘度を下げる重要な工程ですが、これは基板の下降速度と加速度をコントロールして実現しています。

メタル版が基板にくっついて一緒に引っ張られると、そのコントロールした速度、加速度が再現できなくなります。

印刷だけで理想を言えば、紗張りのテンションは高ければ高いほど良いのですが、枠の剛性、メタル版の伸び、接着部の剥がれなどに影響を及ぼすために、むやみやたらに高く設定するのも考え物です。メーカーとよく話をして適正値で管理しましょう。


ちなみにテンションの測定方法は、テンションの測定は紗をストレッチャーにセットして紗を引っ張った時点で測定します。テンション圧の測定には紗のテンションを測定することが可能な専用のテンションゲージを使用します。

(原理的には一定の重さを加えた時の紗の沈み込み量をmm単位で測定します。N値又はKgで表現する必要が有る場合は、テンションゲージメーカーの換算表より算出します。)

メタルマスクの認識マーク

メタルマスクを実装会社に支給するとき、認識マークがあるにもその認識マークが使えない、と言われたことはないでしょうか。

プリント基板なら認識マークは実装面にあれば問題ないのですが、メタルマスクの認識マークは設備によって読める面が異なるという、実にややこしい問題があります。

印刷機はメタルマスクの位置を特定するため、メタルマスクにつけられた認識マークを読み取りますが、スキージ面から撮像するタイプと、基板面側から撮像するタイプの2つの種類が存在します。なんでそんな面倒な?と思われるかもしれませんが、メーカーさんの思惑がいろいろあるのでしょう。

このため、実装を外部に依頼するとき、メタルマスクの認識マークがどちら側についているのか事前に必ず確認は必要になります。


認識マークの製法

メタルマスクの認識マークの加工方法は2種類存在します。

一つは表面(スキージ面、基板面どちらか)にハーフエッチングで認識マークを付ける方法。もう一つは、貫通してしまう(開口)してしまう方法です。どちらの方式も黒い樹脂等でマーク部を埋めてしまいます。樹脂はメタル表面から飛び出さないように充填しています。

前述した印刷機によって使える認識マークが異なるのは、ハーフエッチングの場合です。貫通の場合、テープなどで樹脂部を裏止めしてある場合もありますが、剥がせばどちらの印刷機でも使えます。

認識マークをカメラで認識する場合、マーク部とその周りのコントラスト差が大きくないと正しくマーク位置を認識することができません。基板の認識マークの場合はマークが明るく、周辺が暗くなりますが、メタルマスクの場合はマーク部が暗く、周りが明るく写る逆の論理になります。したがって、マーク周辺に汚れや傷があるとノイズ元になり、正しく認識できなくなることもあります。メタルマスクメーカーでは認識マークの樹脂埋め工程は手作業がほとんどですので、樹脂のはみ出しなどに注意してもらいましょう。

樹脂で埋められた認識マーク部は、メタルマスクの洗浄により落ちてしまうことが結構あります。とりあえずの対処療法ですが、意外に使える裏ワザとして、ハーフエッチングの場合、ソルダーペーストでその部分を埋める(印刷)してしまうと、意外なほどにきれいにカメラに写ります。少量のソルダーペーストを撹拌用のへらで、印刷してあげるとマークのへこんだ部分にきれいにソルダーペーストが埋め込まれます。失敗してもすぐに拭きとれますので、簡単にやり直せます。

認識マーク部の樹脂が取れにくいように、メタルマスクメーカーでいろいろ試行錯誤されているようですが、やはりメタルマスクを何度も超音波洗浄していると、どうしても取れやすくなるようです。

私は、貫通孔の認識マークを使っていますが、やはり樹脂落ちには悩まされました。そこで数年前から、メタルマスクの認識マークの寸法をどんな基板でも0.8mm□にしています。基板の認識マーク寸法や形状は無視してメタルマスクメーカーに変更をお願いしています。認識マークは位置関係さえきちんと出ていて、設備で読める大きさなら問題ありません。

効果は劇的でこの認識マークにしてから樹脂落ちは今のところ発生していません。

同じ悩みでお困りの方はぜひ参考にしてみてください。

表面粗さ(壁面)について

メタルマスクメーカーの営業から、よく壁面の表面粗さについての写真や資料を提出されることがあります。

写真はともかくデータについては良くわからないままのところもあります。それぞれの数値の意味を今一度調べてみます。


表面粗さについては、JISB0601(製品の幾何特性仕様 (GPS) -表面性状:輪郭曲線方式-用語,定義及び表面性状パラメータ)に詳しく記載されています。

規定には、表面の粗さを表すのに、3つの指標があると記されています。

Ra

粗さ曲線を中心線から折り返し、その粗さ曲線と中心線によって得られた面積を長さで割った値をマイクロメートル(μm)で表わします。


Rmax

断面曲線を基準長さで抜き取った部分の最大高さを求めてマイクロメートル(μm)で表わします。傷とみなされるような並はずれて高い山や深い谷のない部分から、基準長さだけを抜き取ります。

Rz

断面曲線から基準長さだけを抜き取った部分において、最高から5番目までの山頂の標高の平均値と、最深から5番目までの谷底の標高の平均値との差の値をマイクロメートル(μm)で表わします。

この3つの指標はそれぞれ独立しているわけではなく、トータルで読み取る必要があります。例えば、Rmaxだけでは、たまたま山の高いところを読みとる可能性があり、それだけで正しく表面の粗さをとらえたとは言えないでしょう。

コーティングについて

バリ取りや、研磨の終了したメタルマスクにさらに、表面処理を行う場合があります。そのほとんどはテフロンコーティングが行われているようです。

テフロンコーティングは、フライパンと同じようにフッ素樹脂をメタルマスク基板面に薄くコーティングするもので、その撥油作用により、フラックスとの摩擦を小さくして、抜け性を向上させるものです。

メーカーによって素材や工法がいろいろあって、効果の大小がメーカーによって大きく異なります。中にはコーティングが厚くなりすぎたり、エッジのダレを発生させたり逆効果になる場合もあるので要注意です。私の経験では中山理研さんが非常に透明な特殊なコート技術を持っており、透明な液体テフロンのコーティングに関して、大きな効果が認められました。

メタルマスクコーティングの検証実験
製法とメーカーの違いによるソルダーペーストとメタルマスク表面の抵抗測定
F-measure2.pdf
PDFファイル 117.0 KB

5年ほど前から量産使用しており、当時作成したメタルマスクも現在も問題なく使っていますので、耐久性もほぼ問題なしと考えて良いでしょう。

耐久性を直接測定することはできないのですが、印刷状態が変化しているかどうかという、間接的な測定においては変化はないと言えるでしょう。

次のグラフは、2007年ごろに納入したメタルマスクを、当時と2011年に印刷検査装置で比較した結果です。

母数が違うので占有率で表してあります。また、大きな開口部はあまり比較の意味がないので、1005と1608の開口部のみを抽出して比較しました。全く同じ環境での印刷ではないので若干の差はありますが、変化があるとは言えないと思います。

検査機は名古屋電機のNLS250です。2.5次元の検査装置なので、体積は絶対値ではなく比率であくまでも参考値です。

このメタルマスクは月当たりおおよそ1000枚印刷し、1ロットあたり200~300枚で切り替えをしています。つまり1か月で約3~5回超音波洗浄をしている計算になります。印刷機はPanasonicのSPP-Vで、スキージ荷重は0.03Mpa(0.04N/mm)で、プリント基板とメタルマスクのギャップが0.3mm押し上げるようにしています。(スクリーンギャップ=-0.3mm)

洗浄機はサワーコーポレーションのSC-A22で、洗浄時間が約3分です。4年の使用で、48000枚程度の印刷、少なくとも144回ほどの洗浄を繰り返したことになります。

当然目視では何も異常は発見されませんし、印刷検査の結果も問題ありません。期間だけで言えば7,8年使っているメタルマスクもあるのですが、こちらも問題は発生していません。もっともこちらは印刷頻度が低いので直接の比較にはなりませんが。


中山理研さんのフッ素コートは焼き付けによってコーティングしているそうです。少なくとも超音波洗浄程度なら剥げ落ちることは無さそうですし、繰り返しプリント基板が当たっても今のところ問題は発生していません。自信を持ってお勧めできます。

なお、工法など詳しいことは直接中山理研さんにお問い合わせください。

メタルマスク品質の考え方

メタルマスクの品質については、壁面粗さだけでは語れるものではないと思います。枠品質やテンションのかけ方、表面のコーティングなどトータルで見なければならないはずです。


SMTにおいて、印刷品質がほぼ実装品質であることはすでに周知のことと思います。印刷品質は、設備、材料、条件等パラメーターが多く単一の要因をコントロールするだけで品質が上がるほど楽ではありませんが、少なくともメタルマスクは重要な要因の一つです。


そのメタルマスクに関して、残念ながら現状では関心が低くなっているように思われます。SMTラインを立ち上げるころは、様々なメーカーの様々な工法によって作られたメタルマスクの評価をどこも行っていますが、それ以来一切何も変えていないという会社もたくさんあるのが現状です。すでに何十年とたって色々なメタルマスクが出回っているのに、いまだにエッチング1本というところも珍しくありません。

特に大手に多いと思いますが、「品質保証の面でプロセスを変えたくない、面倒だ。」というのが大方の意見でしょう。

しかし、年々基板や部品が進化し、設備も更新されているのにメタルマスクだけ変わらないというのはおかしな話ではないでしょうか。0.4mmピッチQFPでエッチングマスク厚180μmをかたくなに守り通した挙句、リフロー後の修正工数を倍増させたという笑い話にもならない事も聞きます。担当者は厳しい条件でなんとか印刷品質を保ちたい、それが技術レベルを上げることだと信じているのかもしれませんが、メタルマスクを見直すだけで楽に解決できるのも技術の一つです。

プロセス条件の変更をなかなか認めないというのは、だれも責任を取りたがらないということの裏返しです。確かに信頼性確保において、根拠のない無秩序な変更は行うべきではありませんが、正しい手順に従って正しく検証されたプロセスに関しては何ら問題はないはずです。

前述の例で言えば、手修正工程が増えれば信頼性は確実に落ちています。何十年も前に決めた取り決めをかたくなに守ることが、品質確保の手法ではないはずです。


また、メタルマスクも最近は安くて早いものが、特にいわゆる下請業者にとって必須となっているようですが、そこに品質が抜け落ちているのが懸念されます。いかに安くとも抜けないメタルマスクを使って、社員総出ではんだごてで修正していては意味がありません。


品質が良くなれば生産性も上がりコスト競争力も上がります。今の印刷品質に不満があるのであれば、思い切ってメタルマスクを見直すことをお勧めします。見直した結果メタルマスクの価格が下がるのが理想ですが、多少価格が上がっても品質が上がれば簡単に回収可能なはずです。コストに関しては会社の評価が厳しくなかなか上がることは認められないかもしれませんが、結果的に安物買いの銭失いにならないようにしてもらいたいものです。


メタルマスクの評価には時間と手間がかかり、おいそれとはできないと思いますが、評価用メタルマスクをストックしておき、ラインが空いたときに行うのが現実的だと思います。それまでメタルメーカーさんにはお待ちしてもらうしかないのですが、お願いして嫌というところもないでしょう。

評価試験はなるべく同じ条件で一気にやってしまうのが理想です。同じソルダーペースト同じ印刷機同じ基板で、印刷検査機があればやはり同じ印刷検査機で一気にやってしまうのがいいと思います。できれば、写真もたくさん撮っておくことをお勧めします。

印刷さえ終わればデータの処理は後でゆっくりできますので、コツコツと進めれば何とかなります。まとめるのは大変ですが、少しずつ計画的に進めましょう。