稼働率

「稼働率」設備を扱う職場なら必ず耳にする言葉だと思います。

しかし、その言葉の意味は会社によって微妙に異なり、他の会社の人と話をする時に、その数値に驚かされることがあります。よくよく聞くと自社と定義が異なるため、変換してみるとたいして違いがなかった、という経験もあるのではないでしょうか。

様々なとらえ方がある稼働率ですが、ひとまずTPMの定義に従って説明します。(個人的には嫌いなんですが)

TPMでは、設備の効率を阻害する要因を「ロス」としてとらえ、そのロスを極限まで小さくしようとする活動です。現場が不可避な時間、例えば計画停止(仕事が無くてラインが回せない等)や、SD(シャットダウン)ロスと呼ばれる、設備の起動時、終了時にどうしても必要な時間などは、ロスととらえても、現場にはどうにもできないので、就業時間からこれらを引いた時間を負荷時間として、この値を分母にして稼働率を定義しています。

よく、実装を他社にお願いするときに聞く稼働率は、負荷時間/操業時間を意味することが多いでしょう。これは、ラインが空いていますか?という意味で聞かれています。この意味の稼働率は、ラインの能力に対してどのくらい仕事が入っているか?という操業率を指しますが、非常に紛らわしいので、ここでは扱いません。

現場で一般的に使われている稼働率とは、会社が現場に与えた時間を有効に使っているか?という事を指します。

稼働率の定義

この図は、TPMの教科書を丸写ししたものです。注意していただきたいのは、設備総合効率の部分です。この部分の計算式は個人的には正しい指標にはならない思っています。皆さんのご判断に任せますが、詳しくはこちらを参照してください。

時間稼働率

TPMの定義では、「時間稼働率=稼働時間/負荷時間」です。負荷時間は、電気設備の点検など会社都合で操業できない時間や、休憩時間や朝礼などで製造ラインが止まる時間を操業時間から引いたものです。

時間稼働率における停止ロスは、SMTラインで言えばほとんどが段取り替えの時間だと言えるでしょう。その他、設備故障なども含まれます。ただしこの時の故障は本格的に修理をしなければならない停止を指し、部品切れやワークのつまりなどオペレーターですぐに復旧できるものは含みません。これらはチョコ停として定義されています。

これらの定義から、時間稼働率は有効時間内に設備をどれだけ使っているのか?と言い換えることもできます。


具体的に計算してみましょう。

1日3交替でラインが稼働しているとします。計算しやすいように分単位で計算します。

1日は24時間なので、24×60=1440(分)が操業時間です。ここから休憩時間等3時間を引くと、1260分になり、これが負荷時間となります。負荷時間のうち段取り替えで378分止まりました。時間稼働率は(1260-378)/1260=0.7 で、70%となります。

性能稼働率

性能稼働率とは、一言で言うと設備の能力をどこまで使っているのか?ということになります。


マウンターなどを見ていると会社によって違うと思いますが、結構良く止まります。部品切れ、部品認識エラー、基板認識エラー、搬送ミス、などなど、これらのちょっとした停止を俗にチョコ停と呼んでいます。(TPM定義では性能ロスとなっています。)負荷時間からこれらの時間を引いた時間が正味稼働時間です。

性能稼働率は、正味稼働時間/負荷時間です。設備がチョコ停無しにフル稼働したら性能稼働率は100%です。性能稼働率は、次の式でも算出することが可能です。

生産枚数/(稼働時間/基板1枚当たりの実装時間)

有効時間内において、最大能力で何枚打てるのか?ということになります。

これも具体的に計算してみましょう。

稼働時間=882分

チョコ停等で停止した時間=177分

性能稼働率=(882-177)/882=0.799

79.9%およそ80%です。

ラインが稼働できる時間は1260分ですが、実際に設備が有効に使われている時間は705分でした。つまり設備が稼働できる状態の時間から実際に生産に寄与した時間の割合はおおよそ56%ということになります。この数値は時間稼働率と、性能稼働率を掛けた数値と一致します。

稼働率計算の具体例

準備したファイル(snr825_logs.zip)リフローから吐き出される基板1枚ごとのログファイルを分析したものです。圧縮してありますので解答してお使いください。

時刻は制御用PCがイントラネット上で時計合わせしてあるので非常に正確です。あるラインの1か月分を抽出してみました。このSMTラインの設備構成は、

印刷機→印刷検査機→ロータリー1→ロータリー2→異型→リフロー

です。

リフローログファイル
基板の通過時刻データ
snr825_2logs.zip
zip ( 圧縮 ) ファイル 316.2 KB

添付ファイルの通過時刻シートを開いてみてください。各列の意味は次の通りです。

検知番号:リフローがカウントする番号です。切り替え時にリセットしています。

日付:基板がセンサーを通過した時刻です。

プログラム名:リフローのプログラム名です。

サイクルタイム:現在の通過時刻から前の基板の通過時刻を引いたものです。

基板の通過時刻を見ているので、単位はシート単位(面付け数は考慮されていません)になります。

基板品種(プログラム名)によってサイクルタイム(タクト)が異なるのは当然ですが、同じ基板品種でも通過時刻にかなりばらつきがあることがわかります。

例えばPCB011Aを例にとります。

生産枚数は961枚です。この生産は投入から終了まで16時間54分06秒かかりました。単純に961で割ると、1枚当たりの平均は、5分03秒になりますが、休憩時間やその他の停止時間も含まれていますので、これで生産計画を立てるととんでもないことになります。このようなデータから概算の基板タクトを求めるには、モードかメジアンを使うことをお勧めします。モードは19秒、メジアンが24秒でした。やや開きがありますが、おおむねこんなところでしょう。どちらをどう使うか、計画立案者の裁量にお任せしたいと思います。

次に停滞時間シートを見てください。このシートはサイクルタイムが10分を超えるものを抽出してあります。この中で、停滞時間が40分を超えるものがあります。これは調べていくと休憩時間をはさんでいることがわかります。また検知番号が1の場合は切り替え時間も含まれます。(ロットの切れ目も存在します。)

それらを除いた停滞時間の大きなもの

311 2011/11/22 23:37 PCB011A 0:12:59 火

35 2011/11/22 21:00 PCB011A 0:12:44 火

これらは交代時間の引き継ぎや10分休憩にかかっています。

これらの停止要因のはっきりしたものを除き、24秒以上かかっているものはすべてチョコ停と考えます。(性能ロス)さらにここから部品補給時刻のログなどをたどっていくと、さらに詳しく停止要因を絞れますが、ここでは詳しく示しません。

このPCB011Aの稼働率について計算してみましょう。

負荷時間は16時間54分06秒で、ここから停止ロス(休憩や引継ぎ等)5時間41分31秒を引いたものが稼働時間で、10時間23分36秒になります。

したがって、時間稼働率は64.6%です。

性能稼働率ですが、これは正確なサイクルタイム(タクト)が分かっている必要があります。とりあえずメジアンの24秒を使います。

稼働時間10時間23分36秒をフルに使って、停止に無しに基板を打てると、1559枚打てることになります。ところが実際の生産数は961枚ですので、961/1559=0.616で性能稼働率は61.6%となります。すなわち残りの38.4%、(3時間59分12秒)がチョコ停で止まった時間です。

通過時間が24秒を超えるものをカウントすると454回ありました。3時間59分12秒から24秒の454回を引いて454回で割ると、8秒でした。約半分の生産に8秒ずつ加算されていることになります。これを大きいとみるか小さいとみるかは各社の独自の判断があるでしょう。

私は稼働率に関しては、生産タクト(サイクルタイム)を考慮に入れるべきだと考えます。この基板はタクトが短いので、1回に止まる時間が性能稼働率に大きな影響を及ぼします。同じ時間、回数止まっても、生産タクトの長いものだと性能稼働率に及ぼす影響は少なくなります。いまのところ明確な算定式はありませんが、何らかの判断が必要ではないかと思っています。