産業機器用等の、比較的大きな商品のプリント基板は、まだまだ挿入実装が健在です。しかしやはり多いのがSMDとの混載実装です。たいていの場合はんだ面はチップを接着剤で仮固定し、挿入部品を実装した後にフロー槽に流す工法が取られます。
残念ながら、最近では回路だけ引いてアートワーク以降丸投げという会社も多くなってきており、とてもフロー槽で流せるような基板に設計してくれない基板にお目にかかることが多くなってきました。
実はフロー槽の取り扱いは大変難しく、私個人の考えですがリフローよりも厄介だと思います。ソルダーペーストはメタルマスクの設計によってその量をコントロールできますが、フロー槽は簡単にはんだ量をコントロールすることができません。思うようにウェーブソルダーを扱うのは職人技です。いくら職人の腕が良くても設計がまともでなければどうしようもありません。
次は実際にあったアートワーク例です。工程はフロー槽が指定されています。
流す向きと言うのが全く考慮されていません。フロー槽に流す場合チップなどは流す方向と直角に置かなければなりません。これはフラックスの分解ガスがたまり、不濡れを発生させないためです。
このようなフロー層を考慮していないアートワークの場合、フロー漕ではんだが塗れない部分にあらかじめソルダーペーストで印刷をしておく、という特殊な工法があります。
SMTの工程の順序としては、
印刷→ボンド→マウント→リフロー
となります。
この時問題になるのが、ボンドディスペンサーのノズルにソルダーペーストが付着してしまうことです。通常では行いたくない工法である理由のほとんどはここにあります。
接着剤のノズルは、相当の高級機を除き必ずストッパーピンがついています。これはノズルと基板の間に隙間を設け、そこに接着剤を流し込むためについています。機種によって違いますが、図のようにノズルと90°方向につけられていることが多いようです。
実際に基板上に塗布するときはこのようになります。
そこで、ディスペンサノズルへのソルダーペースト付着を回避するために考えたのがメタルマスクの開口をシフトする方法です。開口面積はそのままに接着剤ノズルとかぶらない部分に開口形状を変更します。こうすれば、ほぼノズルへのソルダーペースト付着は避けられます。
ソルダーペーストがパッドからかなりはみ出しているが、大丈夫なのかと懸念されると思いますが、こちらのページに印刷オフセットの限界について実験を行っていますので、ご参照ください。